多分スペアキーを持っているのだろう。何台かの車が冬季封鎖のゲートを開けて登って行くのを見ながら登山準備をする。雪もないのにここから登山口の蒼滝トンネル手前まで何分かかるか知らないが歩かざるを得ないようだ。フロントガラスにかかる小さな雨粒で、萎えそうになる登山意欲を奮い起こしてさあ出発だ。
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菰野町のコンビニ前から御在所岳を見る |
藤内小屋に掛かるテレビで放映された漫画 |
やはり冬季閉鎖ゲートから蒼滝トンネルまでは15分程度歩かねばならなかった。ここまでヘルメットを被った藤内壁に登ろうとするクライマーばかりで、私のように御在所まで登るという人は少ないように見える。アイゼンなしで来れた藤内小屋では小雪が舞い、気温マイナス1度。軒下では数人のクライマーが休憩していた。
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沢に積もる雪 |
藤内壁を望む |
これより国見峠方面へ20分ほど登ったところで、いよいよアイゼンを着けなければ登れないようになる。かがんでいると後ろから氷瀑で使う短いピッケルを持ったご夫婦がスタスタと私を追い抜いて行った。颯爽と歩くその姿にを後ろから見てかっこいいなと思う。
藤内壁への分岐では20名ほどが支度の真っ最中で、先ほどのご夫婦もズボンを履き替えてハーネスを装着しているところだ。ここから見上げた藤内壁の真ん中はやはり氷瀑になっているのが見て取れた。
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国見峠にて |
まもなく御在所岳へ |
8合目にあたる、国見岳と御在所岳の分岐の手前まで来ると急に吹雪きが舞い始め寒さを覚える。木々に白い樹氷の花が咲く景色を見ながら上着を着てマフラーをし、毛糸の耳当てをしなければならない。この8合目の分岐で左折して御在所岳への道はまさに樹氷のトンネルだ。吹雪の中なのでどうせきれいには撮れないとは思いながらもついシャッターを押してしまう。
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後ろの樹氷がきれいだ |
これより左へ中道を下る |
スキー場が近いのか、子供さんの歓声が聞こえ出すとパリパリに凍った車道に飛び出る。たくさんの家族連れの人やボーイスカウトの団体が雪遊びに興じているのを横目に、山頂ロープウェー駅へ向かう。この建物の中はまるで温室のように暖かい。しかしトイレをお借りしたあとはまた寒い中に飛び出て、自販機の前で立ったままインスタントラーメンをすすらねばならなかった。
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凍った急斜面を下るのは怖い |
四日市や伊勢湾方面を見下ろす |
下山は登りに使った裏道ではなく中道を取る。道が凍ったこの時期、下りでこのコースを取るのは少し不安だが慎重に下れば何とかなるだろう。風が強いせいで笹の葉っぱがたくさん落ちている急斜面をアイゼンを効かせてゆっくり下りる。誤って足でも滑らそうものなら数メートルは滑落して怪我は必至だ。
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目の前を行くロープウェー |
地蔵岩
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今朝通ってきた藤内小屋を上から見下ろしながら下り、一旦鞍部に下りて今度は雪のない岩を登り返すが、足元からはキーキーとあの嫌な音がする。その岩を登り終えると横を通るロープウェーを見ながらの休憩だ。12時過ぎという時間のせいで、まだまだ登って行く人の方が多いように思える。驚くほど冷たくなった持参のお茶を飲みながら鎌ケ岳を見たが、山頂は雪雲の中に隠れて見えない。
おばれ岩を過ぎたところでアイゼンを外し、もろい花崗岩の道を下ると鈴鹿スカイラインに降り立った。これより30分歩いてゲートに到着。この頃になってやっと青空が顔を出し、鈴鹿の町や伊勢湾には陽光が射していたが、やはり御在所岳山頂はガスがかかっているようだ。青い空は叶わなかったが見事な樹氷や凍った道や吹雪の雪原に大満足だった。 |