山行日 | 2006年8月25日〜27日(前夜発) |
地域 | 北アルプス |
標高 | 南岳3033m 北穂高岳3106m 奥穂高岳3190m |
天候 | 晴れ |
コースタイム | (25日)新穂高温泉5:30---9:20槍平小屋9:40---13:20南岳小屋 (26日)南岳小屋5:50---8:30北穂高岳8:55---11:05穂高岳山荘 (27日)穂高岳山荘4:25---5:00奥穂高岳5:20---6:00穂高岳山荘6:45 ---白出沢出合9:55---11:50新穂高温泉 |
2006年8月25日(金) 6時間かかって到着した新穂高温泉無料駐車場には、すでに数台分しかスペースはなかった。家を出たのが遅かったので仮眠する間もなく出発。前日の仕事がハードでしかも、少々風邪気味の私は体調が芳しくなく、それを見て取った相棒のNさんから顔色が悪いと言われる。50分歩いて穂高平小屋。ここで水をたっぷりペットボトルに入れようとしたが、空の入れ物は1リットルのペットボトルだけ。こんな量で持つかな?と思ったら案の定水不足に陥った。 京都から来て、これから槍ケ岳へ向かうという10人グループの後を歩いて槍平小屋に到着。ここで早くもビールを購入。天気がいいのは嬉しいがこれからはハードな急登が続く。また水を補給し「暑さなんかなんのその」と、意を決して小屋の中から炎天下へ飛び出したが、瞬く間に「あぢぃ・・・・・・」という言葉を連発する。 15分歩くと南岳沢のゴロゴロした石の上を歩くようになる。「雪渓の上ではなくテープに従って歩け」の看板があり、雪渓を左に見て進むと胸突き八丁の急登だ。上方には南岳が見え出してくるものの、ガスに包まれているようだ。そういえば先ほどまで下に見えていた槍平小屋の赤い屋根も今は見えない。このあたりはお花畑になっていて、ハクサンフウロ・リンドウ・イワツメグサなどの花がきれいだ。花をみて何度目かの小休止。 痩せた尾根に出ると木道があり、クサリ場を過ぎるとダイモンジソウやカラマツソウの咲くガレ場の道となる。Nさんはそれほどでもないというが、私には果たして登れるのか?と思えるほどの絶望的な南岳の絶壁が迫る。見上げて悲観的になるものの、登山道は巧く傾斜の少ない場所を選んであるのか、ウサギギクやヨツバシオガマの花を横目に、焦らず一歩一歩足を進めるとやがて、待望の南岳山荘に到着だ。 まだ木の香が残っていそうな新しい山荘は、宿泊すると嬉しいことに500mlのペットボトル水1本をサービスしてくれる。ここでも宿泊名簿に記入しながらビールを飲み、早速すっかり空っぽになった持参のペットボトルに100円/1Lの水を調達する。そして私は清涼ボディーシートで汗を落とし、さっぱりしてから3時間程爆睡だ。
2006年8月26日(土) 翌朝は睡眠中のNさんを起こさずにご来光を見に行く。ティーシャツの上に山シャツを来ただけの姿では寒くて、5時10分の日の出まで、風を避けて岩陰で過ごす。小屋のアルバイト女性は大判カメラを三脚に乗せご来光を狙っている。彼女の話では常念岳左からのご来光ショットは、今日は太陽の前に雲があってイマイチとのことだった。北穂の小屋には灯りがともり、北穂山頂には人影も見える。槍ケ岳は?と見れば丁度南岳の影となり、西へ移動しなければみえないようだった。 朝食を食べに小屋に戻った後は、支度を整えていよいよ大キレットへと向かう。今日は危険なコースを歩くのでフンドシならぬ靴紐とザックのベルトをしっかり締める。岩場を一気に下り垂直なハシゴを降りるところで、なんと昨日の京都から来た団体さんがそのハシゴを下っていた。昨日は槍ケ岳を経由してこの南岳山荘まで来たという。同じ小屋に宿泊しながら気が付かなかったのだ。それにしてもすごいパワーだ。昨日の午後、私が疲れて眠っている間もずーっと歩いていたことになる。
怖いと想像していた長谷川ピークは大したことはなかった。先着の単独者からカメラ撮影を頼まれたが、白ペンキでHピークと書かれた岩の上をスイスイ歩けた程だ。その先にはナイフリッジの岩が望める。ここもなぜか異様に太いクサリがあって大丈夫だ。それにしても見上げたドームや北穂の北壁の迫力たるや凄い。足元にはシュリンゲ・ハーケン等があって、ここは注意しなければならない箇所だが、目の前の迫力ある景色に目を奪われがちだ。 まもなくA沢のコルに到着。格好の休憩ポイントだと思っていたら北穂方向から単独者が下りてきた様子。見上げるとなんとここは怖い箇所ではないか。落石でもあろうものなら直撃される。休憩する場所にも注意を払うべきだと多いに反省した。
さて、いよいよこれより飛騨泣きの難所が始まる。ここまで男性3人組と抜きつ抜かれつしてきた。「お互いに石を落とさないように気をつけましょうね」と声をかける。頭に一撃をくらおうものなら体ごと振られて滑落必至だからだ。つい先日もこのあたりでお医者さんがお亡くなりになられたというニュースを思い出した。 穂高岳山荘を今朝発ってきた人たちだろうか?意外と降りてくる人が多いように思う。上を見上げれば岩だらけ。あの先に北穂の小屋があるはずなのだが見えて来ない。やっと見えたと思ってもなかなか近づかず、しかもそれはまるで難攻不落の城壁のように見える。
ヘロヘロになって到着した小屋では、余裕の表情でテラスで優雅にコーヒーカップを傾ける人達がいた。そんな上品さを持ち合わせていない私はもちろんビール。「ウグッ、ウグッ、ウグッ」っと大きな声を上げて飲むと、視線の先で若い女性の売り子さんが「クスッ」と笑ったのが見えた。 しかしちょっと待て!!!!歩きはこれで終わりじゃないんだ。まだこれから北穂〜涸沢岳の恐怖の岩場があるんだ。手には飲みかけの700円/500mlのロング缶が。ここは涙をのんで半分捨て・・・・・・んな訳ありません。全部飲みました (-^〇^-) ハハハハ
数個のザックが置かれた涸沢への分岐地点を左に見て、ドームを巻くとガスが多くなる。さっきまで見えていた涸沢のカールは見えなくなってきた。右下に昨日通過した槍平小屋はなんとか見えるものの、槍ケ岳方面はすでにガスの中だ。前方から半ズボンでサンダル履きの若者がやってきた。私の後方にあるドームを指差し「あれが北穂ですか?」と聞く。「いいえ、あの向こうですよ」と彼の足元を見ながら答える。
以前このコースを歩いたときは、その高度ゆえ数十秒も鳴り続ける自然落石が、数度起こった。そんなことを思い出し「もし前の方からから落石の音と同時に悲鳴でも聞こえたらどうする?」とNさんに聞く。「怖いこと言わんといて」と返ってきたが、私だとそれこそ腰を抜かして歩けなくなるかもしれない。最低のコルと書かれた表示板を見送ると涸沢岳への急登が待っている。
疲労で重くなった足と、岩を掴んですっかり汚れた手を使って、三点確保で岩場やハシゴやクサリ場を進む。やっと立った涸沢岳山頂から真下に穂高岳山荘が見えると、ようやく緊張感からか開放される。しかしその先の奥穂やジャンダルムの姿は、ガスのグレーを背景に黒々としていて、不気味な迫力で迫ってくるようだ。 11時前という、予定より随分早い時間に今夜の宿泊場所である穂高岳山荘に到着。山仲間のDPさんとDO!さんは今朝、新穂高駐車場を出てここに向かってるはず。まだ来ていないようなので、山荘前で昼食を取りながら待つことにした。
しばらくして、やけに細身で美人の単独の女性がテント泊装備で白出沢から登ってきたようだ。「メガネをかけた50最代と60歳代の二人連れを見ませんでしたか?」と聞けば知らないとのこと。同じことを次にしばらくして登ってきた男性に聞いても、そして次の男性に聞いても知らないという(ちなみに三人目の男性は、私がお顔を知らなかっただけで、囲炉裏のメンバーのGさんだった)。 思いきって大声で白出沢の下へ向かって名前を呼ぶ。ハンドル名のDPさんDO!さんでは恥ずかしいので本名だ。「○本さ〜〜ん、小○さ〜〜〜ん」と声を張り上げたら「お〜〜〜い」の声が白いガスの底から返ってきた。私は続いて「ビール570円やでぇ〜〜〜」と叫ぶ。ヘロヘロで上がってくると思えばそこは兵、二人はまだまだ体力に余裕がある様子。やはり1泊でジャンダルムと西穂を狙うだけのことはある。 その後、その西穂からジャンダルム経由でやってきたKさんとそのお仲間、そして同じく西穂からの囲炉裏メンバーのKちゃんとYさん、先ほどのGさんも加わって総勢9名で小屋前で宴会が始まった。
2006年8月27日(日) 好天は3日も続かない。早朝4時過ぎに小屋から飛び出したものの、あたりはガスで真っ白だ。昨日に北穂に向かった2名を除く7名はそれぞれ西穂経由、岳沢経由、白出沢経由と下山道は違っても、奥穂高岳までは一緒に行く。しかし予報では今日の午後からは雨。そしてご来光を見るどころか、ガスさえ晴れない奥穂山頂で、ジャンダルム〜西穂経由で下山(私にも同じコースで下りろと誘われた)する3名のモチはなかなか上がらない様だ。奥穂山頂で随分悩んだ末に結局、岳沢へ下りる2名を除いた5名は西穂を諦めて白出沢を下ることにした。 そうとなれば慌てることはない。ここを昨日登ってきた3名にとってはピストンとなり、小屋へ泊まるためだけに来たようだが、私にはこのコースは初めての道だ。のんびり下ってもらうことにした。最初大きなガレた急坂だったが、次には雪渓の上を歩く。しかし1時間半も下ればやがて樹林帯の中の道となり、ニッコウキスゲやホタルブクロ、シモツケソウにハクサンシャジンと、花がとても綺麗だ。DK!さんの話だと昨日はあった、雪渓が作る沢にかかるスノーブリッジが今朝は崩落していて跡形もなかったと。 雪解けの冷たい水の横で何度か休憩しながら、やがて白出沢左岸の樹林帯を行けば、新穂高温泉と槍を結ぶ道に出る。ここの広場には穂高岳山荘と書かれた四輪駆動車が泊まっていて、傍らでは冷たくて美味しい水が出ている。この水の美味しいことといえば例えようがない。西穂に行けなかった人達には気の毒だが、私のザックの中のボトルにはその美味しい水が、そして心は3000メートルの難所を歩きとおしたという満足感で一杯だった。
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