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八ヶ岳(硫黄岳)
山行日 2006年10月8日
地域 八ヶ岳(硫黄岳)
標高 2760m
天候 曇りのち晴れ
コースタイム 赤岳山荘駐車場7:30----9:10赤岳鉱泉9:20---10:30赤岩の頭
---11:10硫黄岳---11:30硫黄岳山荘---12:10撤退---
12:55硫黄岳---14:20赤岳鉱泉---15:55赤岳山荘駐車場


 台座の頭を過ぎて大同心を右手に見、まもなく横岳山頂というところでついに動けなくなった。それまで何度か耐風姿勢を取って凌いできたものの、関東から東北の東海上を進む、台風並みの低気圧に向かって吹き込む猛烈な風で立っている事さえできない。ここまで何とかやって来れたが、ここ横岳山頂手前は風の通り道となっているのか、さすがに進めなくなった。地面に膝を着き、登山道脇にある凍てついたロープにしがみつきながら、私は必死で強烈な風に耐えていた。

 このまま危険をおして進むか、撤退して下山するか、戻って硫黄岳山荘に避難宿泊し明日改めて赤岳に登るかの選択をせねばならない時がやってきた。私は周囲をゆっくり見回す。下から見て山頂付近は白銀の世界か?と思えたのは積雪ではなく岩や石に付いた霧氷だった。積雪はない。防寒具の用意もしっかりしてきている。しかし残念ながらこの風では飛ばされる危険性が高い。私は撤退を決意した。

まもなく車道終点 茅野市方面を見る

 大和の地を出る直前まで、慎重に調べた天気ではこの日曜・月曜の連休、北アルプス方面より八ヶ岳方面の方がいいようだ。そこで赤岳を狙って土曜深夜に奈良を発ってきた。案の定、茅野や諏訪方面は予報どおり快晴なものの、八ヶ岳の山頂付近だけがあいにく雲に隠れていた。

本当に10月8日?(赤岩の頭手前)  赤岩の頭でのエビの尻尾

 駐車場が満車の赤岳山荘から赤岳鉱泉への道は、名残のトリカブトやオダマキやホタルブクロの花が咲いていたり、苔むした原生林があったり、沢を越えたりして1時間40分はあっという間に過ぎる。

硫黄岳手前 硫黄岳山頂

 赤岳鉱泉から見えるはずの迫力ある赤岳や大同心の姿は今朝は見えない。小屋の壁に架けられた温度計は6度を指していて、水槽に浸けられたビールやジュースは誰も手を出さないようだ。おまけに強風のせいで、主のいないテント2張りがフライシートは飛び、本体は引っくり返っていた。この先、上から降りてくる人と何度か話することができたが、異口同音に「上は銀世界で霧氷がいっぱい。あまりの強風で引き返してきました」と言う。

硫黄岳爆裂火口と天狗岳 硫黄岳山荘付近から赤岩の頭を見る

 その通り、進むにつれて目の前は銀色の世界となる。強風で飛ばされた霧氷が背中にパラパラと落ちてきて雨具を着用せざるをえない。綺麗な紅葉を見るという希望ははかなく消え去ってしまい、おまけに気温が低いせいでデジカメの電池も赤ランプが点滅だ。

目指す赤岳はガスの中 支柱やロープに付いた氷が飛んでくる

 赤岩ノ頭にでるとさすが稜線だけあって強烈な風だ。ザックの紐やカッパの襟がハタハタと頬を打ち痛くて仕方ない。硫黄岳への登りでは私の黄色いザックカバーが吹っ飛んでしまう。あまりの強風のため拾いに行くどころか、思わずその場にしゃがんで耐風姿勢を取らねばならない。息をするのも辛く、手袋で口を覆ってはじめて可能となる。飛散防止の紐を付けたくらいでは帽子が飛ぶのを止められず、私はそれをザックに仕舞った。

左端は横岳 赤岳と阿弥陀岳

 硫黄岳には数人の登山者がいたが大抵ここから引き返す様子。私は点在するケルンの影に入って風を避けながら進むことにした。硫黄岳山荘の軒下で立ってパンを食べ、なおも進むものの台座ノ頭から先は一層風が強くなった。阿弥陀岳付近で沸いたガスは勢いをつけて赤岳の山頂を駆け抜ける。右手近くにある大同心はその名の通り大きくどっしりと構えてはいるものの、あまりの強風をしてまるで咆哮をあげる獅子のように思えた。

赤岳の下には行者小屋が見えた 赤岳

 耐えようと体を右に傾けて進めば、わずか数秒風が止んだせいで右に倒れそうになる。そしてまた吹き出した風に、今度は左へよろけるということの繰り返しだ。しかしもうすぐ横岳への急登が始まるという箇所で、ついに私は進めなくなった。もし飛ばされたらという恐怖心に勝てなくなったからだ。

大同心 まもなく赤岳鉱泉に着く

 皮肉なことに下山する頃になって天候は回復してきたようだ。しかし稜線の強風は未だ止んでいないに違いない。赤岳鉱泉からの帰りは心残りで、何度も降り返りながらの歩行となった。下山して分ったが、北アルプスでは悪天候をおして強行したせいで遭難があったと聞く。6年ぶりの再訪を狙った赤岳だったが、山は逃げない。また来るぞ、赤岳!!

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